先日、日本を代表する画材メーカー ホルベイン株式会社が主催するワークショップに参加してきました。普段、何気なく使っているメディウムですが、その種類や組み合わせ次第で、実は作品の仕上がりが劇的に変わります。今回は「下地と質感」に焦点を当てて本ワークショップのレポートしていきます。
意外と新しい?アクリル絵具の歴史
山手線大塚駅から歩いて7分ほどにあるホルベイン東京営業所で開かられたワークショップ。
会場に入ると、テーブルにはずらりとメディウムが並んでいました。
まず最初に、私たちが使っているアクリル絵具が一体どんな構造なのか、ワークショップに入る前に講義を受けました。絵の具を作りのプロであるホルベインの方直々です、とてもわかりやすく説明してくれました。
1920年初頭メキシコの画家を中心に壁画運動が起こりましたが、当時はセメントによるフレスコ技法で描かれ、直射日光の当たる屋外での展示に耐えうる、耐久性のある絵の具を模索していたそうです。そんな中、1955年にアメリカのリキテックス社がアクリル絵の具を発売しました。それによってアーティストたちは既成概念や素材に縛られることがなくなり、より自由に、表現することができました。リキテックス社のアクリル絵の具は、当時のアメリカ美術の潮流とも相まって、急激に広まっていきました。

アクリル絵具は比較的新しい絵具なんですね
アクリル絵具の「構造」はどうなっている?
ほとんどの絵の具は、簡単に説明すると、顔料と糊(展色剤)で出来ています。顔料を、どの展色剤を使って仕上げるかで、絵の具の性質が変わります。展色剤が、アラビアゴムなら水彩絵の具、植物油なら油絵の具、アクリル樹脂エマルジョンならアクリル絵の具になります。
絵の具の透明・不透明
絵の具の透明・不透明の違いは、顔料と展色剤の配合比率によって変わります。顔料が少なく、展色剤が多いと透明に。逆に、顔料が多く、展色剤が少ないものは、不透明になります。一般的にアクリル絵の具というと、不透明で艶消しのアクリルガッシュのイメージが強く、アクリル絵の具=不透明絵の具、と思われがちですが、アクリル絵の具にも水彩絵の具のように、透明なものと、不透明なものがあります。
それぞれの「メディウムの用途」を理解する
アクリル絵の具は、さまざまなメディウムを駆使して、独自の表現を広げられることが、魅力のひとつです。でも、メディウムがたくさんあると「自分の表現には何を使えばいいの??」と、迷子になってしまうこともありますよね。そんな時の解決方法のひとつとして、「すべてのメディウムを試用してみる!」ことが、やはり一番いいと思います。が、全種類を揃えるのもなかなか大変ですよね。そこで、メディウムの基本的な用途をざっくりとまとめてみました。
- ジェルメディウム ・・・・ ホルベインの全てのメディウムの基盤となっています
- ジェルメディウム ・・・・透明な盛り上げ材・接着剤など
- ジェッソ ・・・・・・・・地塗り・下地材
- モデリングペースト ・・・盛り上げ材
- プライマ ・・・・・・・・絵の具の固着をよくする(制作前に塗布)
- バーニッシュ ・・・・・・作品の保護(制作後に塗布orスプレー)

絵具を表現したいようにカスタマイズできるのが、メディウムの仕事ですね
同じメディウムでも「少しづつ違う特徴」を知る
同じメディウムでも、粒子による違いや、質量の違いなど、少しづつ特徴があります。
それぞれの詳細な特徴をみていきましょう。
ジェッソ(地塗り・下地材)
絵の具のくっつきや発色をよくしたり、支持体の質感などを変えることができます

「ジェッソS」ー「ジェッソLL」は粒子のサイズの違いです。LLは乾いた後、手で撫でると、ざらざらとした抵抗感が残りました。逆に、ツルツルの画面にしたい場合は、粒子の一番細かいジェッソSを何層かに分けて塗布し、その度にサンドペーパーで擦りながら平滑な画面にしていきます。クリアジェッソは、下描きを見ながら描きたい場合に便利です。カラージェッソは、かなり隠蔽力があるなと思いました。アブソルバンは吸収性の下地です。アクリル画なら水分を、油画なら油分を吸収するので、乾燥が早く、マットな質感に仕上がります。
基本の使用方法
・基本は水で薄めす、そのまま使用。水で薄める場合は20%まで
・中身をよく混ぜてから使う
・速乾性があるが、完全乾燥は1〜3日ほどかかる
・厚くしたり、平滑な画面にしたい場合は、一回で塗布しようとせず、乾燥後、数回に分けて仕上げる
モデリングペースト(盛り上げ材)
乾燥後は、ナイフや彫刻刀で削ることができます

「モデリング・ライト」は縮みと質量が少なく、たくさんモデリングしたい場合に、使い勝手が良い印象でした。エッジを効かせたい時には、シャープな筆跡を強調できる「ハイソリッド」がオススメ。「パミス」はグレーのみで、今のところ白はないそうです。モデリングペーストは肉やせを起こしやすいので、乾燥後の状態を意識しながら作品に反映させると良いと思います。どのぐらい縮むのか分からない場合は、試し紙にテストをしてみることをオススメします。
気になったのは、紙のような質感になる「紙肌ペースト」というモデリングペースト。これは、ガラス面やプラスチック面でも塗布するだけで紙のような下地になり、水彩絵の具ものせられるのだとか。実際、モデリングペーストというより、ジェッソのような存在だなと思いました。いつか使ってみたい素材です。
基本の使用方法
・そのまま使用または絵の具と混ぜて使用
・乾燥には1日以上必要
・乾燥後ヤセるので注意が必要
ジェルメディウム(透明な盛り上げ材)
アクリル絵の具に混ぜて使用し、硬さを調整したり立体的に盛り上げたり、コラージュの接着にも使われます

ジェルメディウムは塗始めは乳白色ですが、乾くと透明になります。硬さやエッジの強弱は、作品のテイストや好みに合わせて使い分けるよ良いと思います。これは作品の質に寄せるのが良いのかなと。それぞれのメディウムの差異は微細ですが、確実に質感が変わるので、使いこなせたらオリジナルの画面になるのではないでしょうか。
基本の使用方法
・基本は水で薄めす、そのまま使用。水で薄める場合は20%まで
・乾燥には1日以上必要
・乾燥後ヤセるので注意が必要
画材のポテンシャルを最大限に引き出すメディウムの世界。
皆さんも、いつもの絵具に一つ新しいメディウムを足して、質感の冒険をしてみませんか?

